今でも葬儀の際には昔の旅の道具が棺の中に納められます。
昔の葬儀には「紙縒り」が使われました。
通夜の読経が終わり、皆が席に着いてしばらくすると、短冊に切った薄い和紙が配られます。
この薄い和紙を細い紐状によって紙縒り(こより)を作ります。
次に、それを結んで一本の紙縒りに結び目をたくさん作ります。
この結び目は数が多いほどいい。
手先が器用な人だと一本の紙縒りに13個から16個位の結び目を作ることができます。
最初の段階でいかに細い紐が作れるかが大事。
この習慣も、A村では有るが隣りのB村に行くと無かったり、その隣りのC村には有ったりと様々でした。
当時、いろんな人に尋ねても
「通夜は長いから眠くならないようにやるんじゃないか」
というような話でしたが、
「年寄りほどたくさんあるといい」
という伝承は残っていました。
10年以上も経ってからでしょうか。
三途の川を渡ったところにいる奪衣婆(だつえば)に向かって投げるんだ
という話をとある古村の尼僧さんに伺うことができました
奪衣婆は結び目の中に何か入っていると思って全部の結び目を解く。
その解いている間に身ぐるみを剥がされないよう逃げるんだ。
だから足の悪い年寄ほどたくさん必要なんだ。
という話でした。
現在はお金が掛からない小さくてシンプルなお葬式が人気ですが、出来る限りのことはして大切な故人を送ってあげたいという想いもあります。
例えば、通夜の席や葬儀の前後に、皆で故人の冥福を祈りながら紙縒りを結び、それを棺の中に入れてあげるというのはいかがでしょうか?
何よりお金が掛からず、子供も楽しんで出来ますし、ほとんどの人は紙縒りを作る機会がありませんから新しい体験もできます。
最後のお別れには皆で生花を棺の中に納めます。
あなたが想いを込めて作った紙縒りを入れてあげることによって
より深く大切な人にあなたの想いが伝わることでしょう。