はじめに
学生時代、<ゴンダ文法>を用いた授業で1年間サンスクリット語の初等文法を学び、翌年最初の授業で『般若心経』原典があまりにも簡単に読めた時の感動は今でも忘れられません。
現在、カルチャー教室で『般若心経』の内容を教える講座を受け持っております。
写経をはじめもっと内容を知りたい、入門書を読んでみたが難しくて意味がさっぱりわからないという生徒さんを前に、なんて難解なお経なんだと日々痛感しています。
本企画は『般若心経』原典を読んでみたいという方に最低限のサンスクリット語の知識を提供し、その希望を叶えることを目的とします。
構想から10年が経過しましたが、新年を迎え、今回あらためてサンスクリット原典で『般若心経』を読み直してみたいと思います。
本企画によって、サンスクリット原典で『般若心経』を読めることの感動を、一人でも多くの方々に伝えられたら幸いです。
・テキストは『般若心経・金剛般若経』(中村元・紀野一義訳注、ワイド版岩波文庫)所収を用いました。
・<ゴンダ文法>をお持ちの方のために文法事項の該当箇所を示しましたので、学生時代にサンスクリット語を必修された方は参考にして頂ければ幸いです。
Namas sarvajñāya
<SKT>Namas sarvajñāya
namas n.敬礼。(しばしばD.とともにinterj.として)。
sarva adj.全ての、あらゆる、一切の。
jña adj.〔・・・に〕通じている、(あることに)通じている人。
sarva-jña comp.adj.すべてを知り尽くして〔見通して〕いる、全知の。
sarvajñāya D.sg.m. <ゴンダ文法>p.21 a語幹変化表を参照。
<玄奘訳>なし
<羅什訳>なし
<私訳> 全てを知り尽くして見通している者(ブッダ)に礼拝し奉る。
【略語表】
adj. 形容詞
comp. 複合語
D. dative(為格、与格)
f. 女性
interj. 間投詞
m. 男性
n. 中性
sg. 単数
<玄奘訳> 『般若波羅蜜多心経』(玄奘訳、大正蔵第8巻)
<羅什訳> 『摩訶般若波羅蜜大明呪文経』(鳩摩羅什訳、大正蔵第8巻)
<ゴンダ文法> 『J.ゴンダ:サンスクリット語初等文法』(訳者 鎧 淳、春秋社)
【参考文献】
『般若心経・金剛般若経』(中村元・紀野一義訳注、ワイド版岩波文庫)
『J.ゴンダ:サンスクリット語初等文法』(訳者 鎧 淳、春秋社)
『A Sanskrit-English Dictionary』(M.Monier-Williams)
『漢訳対照 梵和大辞典 新訂版』(荻原雲来編纂、山喜房佛書林)
『サンスクリット入門 般若心経を梵語原典で読んでみる』(涌井 和、明日香出版社)
『サンスクリット原文で『般若心経』を読む』(大崎正瑠)
『『般若心経』梵文和訳ノート』(長澤弘隆)