おはようございます、有坂脩岳です。
先日、お葬式の際に位牌に記した年齢についてお問い合わせを頂きました。
今回あらためて調べ直した事をまとめてみます。
葬儀などの仏事では昔からの慣習に倣って故人の位牌には『享年○○歳』『行年○○歳』等と記します。
その際、○○歳の年齢は昔からの慣習に倣って『数え年』で故人の年齢を記しておりました。
ところが近年では、○○歳の年齢を「数え年」ではなく『満年齢』で記すようにもなってきました。
今回、あらためて葬儀の現場で儀式を支える葬儀社のスタッフにもリサーチしたところ、現在では「享年○○歳」「行年○○歳」の年齢には、『数え年』と『満年齢』が混在して使われていることがわかりました。
つまり、実際の葬儀の現場では
①享年 + 数え年
②享年 + 満年齢
③行年 + 数え年
④行年 + 満年齢
⑤満年齢
が使われております。
ですから、葬儀の司会者は、導師を勤めるお寺さんに必ず確認をするようにしているそうです。
ここで、『享年』『行年』という言葉について『広辞苑』より抜粋しておきます。
【享年】きょうねん
(天から享(う)けた年の意)死んだ者がこの世に生きていた年数。死んだ時の年齢。行年(ぎょうねん)。
【行年】ぎょうねん
①享年(きょうねん)に同じ。
②こうねん。
【行年】こうねん
(ギョウネンとも)生まれてこのかたの年。年齢。生年(しょうねん)。
次に、『数え年』『満年齢』も『広辞苑』より抜粋しておきます。
【数え年】かぞえどし
生まれた年を1歳とし、以後正月になると1歳を加えて数える年齢。
【満年齢】まんねんれい
誕生日ごとに1歳ふえる年齢の数え方。また、それで数えた年齢。
次に確認をしておきたいことは、日本では『満年齢』はいつから使われるようになったのかということです。
民法には、
・『年齢計算ニ関スル法律』(明治35年法律第50号)
1902年(明治35年)12月22日施行
・『年齢のとなえ方に関する法律』(昭和24年5月24日法律第96号)
1950年(昭和25年)1月1日施行
という法律があります。
明治35年に施行された『年齢計算ニ関スル法律』により、これまで使われていた「数え年」という年齢の数え方を『満年齢』に改めようとしましたが、実際の日常生活では今まで慣れ親しんだ「数え年」が使われました。
昭和25年に施行された『年齢のとなえ方に関する法律』
本文
第1項 この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律(明治35年法律第50号)の規定により算定した年数(一年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。
第2項 国又は地方公共団体の機関が年齢を言い表わす場合においては、当該機関は、前項に規定する年数又は月数によつてこれを言い表わさなければならない。但し、特にやむを得ない事由により数え年によつて年齢を言い表わす場合においては、特にその旨を明示しなければならない。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
により、『満年齢』が使われるようになりました。
この『満年齢』という年齢の数え方が使われるようになってから70年の歳月を経ました。
70年という時の流れの中で、『享年』『行年』という言葉の使われ方にも変化が生じました。
つまり、終戦後の昭和24年まで使われてきた『数え年』という年齢の数え方が、『満年齢』という数え方に変わることによって『享年○○歳』『行年○○歳』の○○歳も『満年齢』が用いられるようになってきたということです。
この結果、仏事においても
①享年 + 数え年
②享年 + 満年齢
③行年 + 数え年
④行年 + 満年齢
⑤満年齢
という使われ方がされるようになりました。
更にここで問題となるのが
①享年 + 数え年
②享年 + 満年齢
③行年 + 数え年
④行年 + 満年齢
のどれが正しいのかということです。
実は、これらは「どれも間違いではない」と私は考えます。
仏教の教えは『諸行無常(しょぎょうむじょう)』です。
「この世の中は常に変わり続けている」という釈迦の教えです。
この教えに照らせば、日本では年齢の数え方が「数え年」から『満年齢』に移り変わったわけですから、『享年○○歳』『行年○○歳』の○○歳が「数え年」から『満年齢』に変わっても正しいということになります。
ですが、私たち現代人は白黒をつけないと気が済まないという側面もあります。
どうしても白黒をつけないと気が済まないというのであれば、法律に則り『満〇〇歳』で表記するのがよろしいかと存じます。
最後に、私はどれを用いるのかということですが、
①享年 + 数え年
です。
その理由は、お正月には歳神様をお迎えし新しい命を頂きます。その歳神様から頂いた命(年)の数はいくつですよ、という考え方が今の私には一番しっくりするからです。
この記事が皆様のお役立てば幸いです。